今年度の研究実施結果は以下の通りである。 1.アプリケーションソフトウェアの制作 東京都立中央ろう学校及び静岡福祉大学に在籍する聴覚に障害のある生徒及び学生を対象とし、授業における音声言語をパーソナルコンピュータ(以下、パソコン)入力者が要約入力し、書記言語に変換して生徒及び学生に伝達するためのアプリケーションソフトウェア(以下、ソフト)を監修、発注した。LANケーブルにより接続したパソコン間でデータの送受信を実現する機能はすでに存在する先行ソフトと共通するが、独自の機能として、(1)日本語変換ソフトの操作時に文字列を確定すると同時に、データを生徒及び学生のパソコンに送信する即時データ送信機能、(2)手書き文字及び手書き図形を筆記ならびに描写すると同時に、上記同様、筆順に沿って即時にデータ送信する機能、(3)漢字変換時に入力した文字列をルビとして認識し、括弧付きで送信するルビ付与機能等を付与した。 2.アプリケーションソフトウェアを活用した実証実験 完成した同ソフトを活用し、上記の2校における授業現場で情報コミュニケーション支援を実施した。東京都立中央ろう学校においては、英語教師の協力により、聴覚障害生徒を対象に、上記ソフト独自の機能を活用した授業を実施し、単に文字入力にとどまらず、発音記号の手書き入力を通じて、効率的な習熟をはかった。静岡福祉大学においては、教員の協力により、週20コマ程度の授業において同ソフトを活用した情報コミュニケーション支援を実施した。 3.当事者の開発過程への参加 上記ソフトの監修、制作会社への発注にあたり、支援を受ける立場である聴覚に障害のある学生を同席させ、当事者としての意見を開発に反映させた。 4.米メイン州立大学の視察 米メイン州立大学における聴覚障害学生支援体制を視察し、情報コミュニケーション支援サービスの体系、システム等の情報を収集した。
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