研究概要 |
自然に対する感謝心の生じる要因とその結果または関連要因を見出すための本調査に先がけ、予備的な調査を行った。すなわち、1自然に対する感謝感情及び他の感情を測定するための尺度の構成、2感謝感情と関連すると予想される環境への態度尺度の構成を行った。1については、168名の大学生を対象に、a自然という言葉からどのような対象を思い浮かべるか、b自然という言葉からどのような形容詞を思い浮かぶかをたずねた。その結果、頻度の多かったものから順に、森林、海、川、山、風、木などが得られた。また、形容詞として、a美的価値などの価値、b恐怖、c広さ・大きさ、d癒しというカテゴリーが見出された。これらの4つのカテゴリーは、反応全体(538語)の91.1%を含んでいた。環境への態度尺度については、Milfont, & Duckitt(2004)による環境態度尺度に関する研究結果をもとにして、5つの下位尺度を選択した。この尺度に含まれる29項目を用いて、157名の大学生を対象として、因子的妥当性と構成概念妥当性を検討した。その際、環境配慮行動尺度(Schultz & Zelezny,1998)、経済自由主義尺度(Kilbourne, Beckmann, & Thelen,2002)を、基準となる変数として選択した。その結果、Mifbnt, & Duckitt(2004)による結果に反し、5つの下位尺度の項目の内部一貫性として低い値が得られた。そこで、探索的因子分析を行った結果、3因子が示唆された。第1因子は、環境配慮行動尺度と有意な相関をもつ因子であり、第2因子は、経済自由主義尺度と有意な相関係数をもっていた。1については、タイの大学生についても同時に調査を行い、一部を除き日本とほぼ同様の結果を得た。これらの結果に基づき、日本とタイとの比較研究のための自然に対する感謝感情及びその他の感情項目と環境保全態度尺度からなる質問紙を構成した。
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