研究概要 |
1.20歳〜50歳代の成人に対して質問紙調査を行ったところ,結婚した時点より実親に対する子としての意識は低下するものの消失することはないこと,実子を得た時より子育て期間中は実子に対する親としての意識が強くなること,実親が高齢期に入ることより実親に対する子として意識が再び強くなることが明らかになった。また,40歳代半ば以降においては,実子と実親両者に対する養育意識が高まり,彼らに関する葛藤なども増えることも明らかになった。2.過去20年程度の成人期発達に関する実証的研究を概観し,本テーマに関連すると思われる変数を検討したところ,養育態度,親子関係/夫婦関係,ジェネラティビティー,中年期危機,思春期と更年期の交錯,心理的離乳,家族構成の経年変化,時間的展望,介護などが抽出された。3.過去20年程度の公刊されている臨床研究を概観し,本テーマに関連すると思われる事例やエピソードを収集したところ,中年期の夫婦関係問題,子の自立と親の子離れ,介護をめぐる葛藤などに関する事例報告などが見られ,生涯発達上問題が生じやすいことが明らかになった。4.子の発達段階からサンプルを抽出して,小学2年生,小学5年生,中学2年生,大学生について,父母と同居の独身者を子サンプルとその父母を対象として調査を行ったところ,前述の予備的研究の知見がおおむね実証的に明らかになり,子/親としての心理社会的地位の特性が発達段階や家族段階によって異なること,実子をもつことが自己の子ども性を弱めることなどが明らかになった。
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