本研究は、擬態語による性格記述の特徴と機能を明らかにし、擬態語の特色を活かした性格評定尺度を構成しようとするものである。19年度中の実績は以下の通りである。 1.擬態語リストの整理と尺度構成〈S系統〉西岡ら(2006)で構成した擬態語尺度(自己評定用)の問題点(=「軽薄さ」「淡白さ」の語数が少ないこと等)を改善した改良版尺度を構成した。また、他者評定用尺度の構成に向けて、他者評定データの因子構造を検討した。 2.擬態語と非擬態語の比較〈E系統〉(1)記憶成績の比較:語の使用頻度・文字数・望ましさが同水準になるよう統制した擬態語群と非擬態語群(各40語)について、語の再生再認成績を比較したところ、非擬態語群では見られる「自己関連付け効果」(=自己評定等の自己関連付け処理による記憶の促進効果)が、擬態語群では見られなかった。このことは、擬態語が自己概念と結びつきにくいことを示唆している。例えば他者の性格の否定的側面を指摘するような場合に、擬態語を用いることで、相手の自我を脅かすことなく穏やかに伝達できる可能性がある。(2)対人場面における感情喚起の比較:意味の類似した擬態語・非擬態語のペアを作り、それらの語を「他者に言った後の気分」や「他者から言われた後の気分」の良し悪しを比較した。(3)自叙写真に基づく性格判断における機能の比較:「自分自身を表現する」目的で撮影された写真(=「自叙写真」)を提示し、撮影者の性格を、擬態語および非擬態語により評定させ、評定値や評定の確信度等を比較した。(2)(3)については、得られたデータを現在分析中である。 3.擬態語利用に関する実態調査〈R系統〉性格を表す擬態語のうち、使用頻度の高い語と低い語、肯定的あるいは否定的な意味を持つ語、自己評定あるいは他者評定において特によく用いられる語等を抽出し検討した。また、教師が児童・生徒の個性を記述する際に擬態語をどのように利用しているかについて、探索的な調査を行った。
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