本研究はフィリピンセブ島の都市スラムをフィールドとし、日本のアジアにおける幼児とその家族の心理的援助システムの開発を目標とするアクションリサーチである。今年度は、ベースライン調査からみた効果測定に加え、地域プログラムの記録からも効果の検証をおこなう。2年間の実践経過と成果をまとめ、心理臨床的支援モデルを提示する。 1. 親教育プログラムの効果 第1次評価からプログラムを以下の2点につき修正。(1)配偶者からの理解と協力を促すセッションを付加し、(2)抑うつが高得点である参加者についてファシリテーターと事前に協議。結果、養育行動、抑うつ・親子の関係性おいて、改善が見出された。 第1次受講者の子どもが、小学校に進学したため、学校での適応を調査した。受講者の子どもは、非受講者の子どもと比較して、2年生時点での、総合成績・算数・国語において、成績が高かった。また学校での生活態度などにおいても、評価が高かった。 2. 心理臨床的支援モデル センター・ベース型の就学前幼児向けの親教育プログラムは、その有効性が確認され、より広い地域へと波及しつつある。しかし講師の養成は、現地の生活における時間的問題から、余裕を見て行われる必要があった。今後は、直接的なプログラムの実施と並行して、より広い実施のために地域の既存のプログラムへの統合も視野に入れ検討していく。
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