本研究の目的は、日本のカウンセラーの性的指向に関する知識と心理的支援の技術の向上であるので、平成18・19年度には、まず、(1)アメリカの研究協力者であるWorthingtonの開発したLGB-KASH(異性愛者のLGBに関する知識・態度尺度)、LGB-CSI(LGBに関する肯定的カウンセリング自己効力感尺度)の改訂日本語版の作成を行った。LGB-KASHをWorthingtonと内容の検討をし、日本の社会に妥当ではない内容を削除し、全28項目を116名の臨床心理士を目指している大学院生を対象に調査を実施した。その結果、「LGB肯定感」「宗教とLGB否定感」「知識」の3因子が抽出された。この尺度の信頼性・妥当性の検討も行った。(2)アメリカの研究協力者であるDeBordとともにカウンセラーのためのセクシュアル・マイノリティに関する訓練のあり方について検討し、全5回の「セクシュアル・マイノリティセンシティブカウンセラー養成プログラム」を作成し、臨床心理士を目指している大学院生平均1回の参加者30名を対象に実践を行った。プログラムは気づき、知識、スキルという流れで行い、セクシュアル・マイノリティのクライエントとのロールプレイを導入した。このプログラムの効果についてLGB-CSIを用いて測定を行い、プログラムの前後で有意な意識の変化、肯定的カウンセリング自己効力感の変化が得られた。平成20年度には、アメリカ心理学会において、(1)の研究結果を発表し、他の研究者と意見交換を行った。また、セクシュアル・マイノリティを含めた多文化に関する訓練の必要性について多文化間精神医学界出版の「こころと文化」に論文を投稿し、心理臨床家を目指すものにとって必要な知識・能力についてまとめた。
|