研究計画調書に記載の通り、初年度は国際理解教育に関する歴史研究及び資料収集を中心に進めた。特に国立教育政策研究所教育図書館に保管されている1950年代の日本ユネスコ国内委員会の資料を集め、我が国における国際理解教育の発展史を整理した。さらに就学前教育の実践現場をも含めた国内外での国際理解教育関連の第一次資料も収集した。同時に、ジンメル等の他者理解に関する文献及びその他の社会学や心理学等で醸成されてきた知見について調べた。またコンフリクト・フリーであるという従来の国際理解教育に対する批判に鑑み、コンフリクト関連の情報を調査し、関連文献も収集した。歴史研究では「国際理解教育の理念」や「東西文化価値の相互理解と国際理解の教育」などの日本ユネスコ国内委員会による資料が現代の国際理解教育の現状が相対化されるという意味合いにおいて重要な資料であると言える。コンフリクトに関しては米国のコンフリクト・リゾリューション関連のサイト等を調べたが、他者理解の制約を内包しているように思われ、この点については継続的に検討していく所存である。 国内調査では、就学前段階における国際理解教育の可能性について調べるために厚木市の幼稚園を、諸外国の実践にも資する国際理解教材を求めて水俣市を訪問調査した。さらに、国際理解教育の国際的な推進者でもある元プリンダース大学国際教育研究所長のG.R.ティーズデイル氏へのインタビューをアデレイドにて行い、その他オーストラリア国内の学校や図書館での資料収集にも務めた。ティーズデイル氏からは、上記の「他者理解の制約」という研究上のアポリアに対して、ホリスティックな世界観が国際理解教育においても重要であることを示唆され、2年目以降の研究にも協力するとの確認をとることができた。
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