本研究の目的は、市場経済移行下で高等教育の規模が急激に拡大しているベトナムにおいて、その高等教育の実情に即した大学教授法研修プログラムを開発することである。具体的には、大学教授法研修のための教材開発、同教材を活用した大学教授法研修プログラムの制作、研修の開催、反省会の実施と改善点の抽出、教材と研修プログラムの改訂などを実施する。 1年目(平成18年度)はホーチミン市国家大学社会・人文科学大学(USSH)にて大学教授法研修会を実施した。2007年1月30日に「大学教授法の基本研修(1) シラバスを書こう」、2月1日に「大学教授法の基本研修(2) 教授法の実践アイデアをみつけよう」を行った。参加者数は85名であった。研修の実施結果と反省会および受講者アンケートからは、次のような中長期的課題が明らかとなった。 ・学生を主体的に学ばせるためには、まず教員が主体的に考える習慣を身につける必要がある ・立場、世代、学部によるセクショナリズムに陥りやすいので、大学構成員全体の交流や意見交換を活発にして、コミュニティ形成を図る必要がある ・将来的には「外圧」(外国人研究者である発表者)による研修ではなく、自前で継続的に教育改善に取り組む仕組みを整備する必要がある 2年目(平成19年度)は、同大学で「教育・学習セミナー」を実施し、1年目の研修会で出された教育改善に関する意見をまとめてフィードバックを行った。また、実業界で活躍する卒業生を招き、大学教育や大学生に対する期待についての意見交換会を実施した。
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