本研究は、ワークショップ型授業メソッドを本格的に社会科の教科学習に導入し、活動中心の授業事例とその授業フォーマットを開発することを開発することを目的とした。このメソッドの原理は、「枠の中の自由」という考え方である「枠」(活動空間)を設定することで、学習者の試行錯誤を促し、「ふり返り」の局面で「腑に落ちる」学びを生み出すのである。平成19年度の研究成果は、次の2点である。 第1に、レイヴやウェンガーらの「状況論的学習観」をもとに、ワークショップ型授業の学びの特質を明らかにしたことである。状況論的学習観とは、学習を個人の知識獲得の行為ではなく、「実践コミュニティへの参加の度合い」とみる。この学習観から、中学2年社会科歴史「君も起業家!明治ビジネスプラン選手権」の単元を開発し、実験授業における生徒の認識を検討した。その結果、知識の使用・操作の面と学習共同体の成員性の増加の面から、生徒の学習を評価できる枠組みを明らかにした。 第2に、ワークショップ型授業の原理にもとづく単元開発を、小中学校の教員の研究協力をえて進めたことである。部屋の四隅の活動による「承久の乱」「ペリー来航」の単元、ランキングによる「日本国憲法」「江戸時代の幕政改革」の単元、自由探索とクイズづくりによる「火事を防ぐ」の単元などである。これらを通して、活動後の「ふり返り」の局面における教師の「言語技術」の開発が課題として明らかになった。体験活動と思考をつなぐ「言葉」の役割とその指導体系を社会認識の育成の上から明らかにするという課題である。 上記の内容は、平成19年度研究成果報告書(平成20年3月)としてまとめている。
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