今年度の研究によって得られた成果は次の通りである、1)音環境・音楽環境をとらえる際には、「○!ア」環境としての音、「○!イ」文化としての音・音楽、「○!ウ」芸術としての音楽、という3つの視点が必要であること、2)音楽的イメージの育成には、「○!ア〜ウ」の相互のかかわり合いを認識することと、無意識の働きを活用することが不可欠であること、3)これまでの音楽科教育では、学習の中心が「○!イ」と「○!ウ」におかれ、「○!ア」の学習が希薄であったこと。 当初の予定では、昨年度のうちに国内外のデータ収集を行うことになっていたが、研究の過程で、学習指導要領の改訂という大きな変革があった。そのため、新たな要素を加味して研究方法を改善させる必要性が生じた。そこで、日本における音環境・音楽環境の実態を明らかにすることに研究の中心を移し、実験については次年度に執り行うこととした。 研究成果の発表については、11の欄に示した通りである。論文は、音楽科の教材が「芸術」と「文化」という2つの教材力を備えていること、そしてそれぞれの方向を相補的に深めることが大切であることについて述べたものである。研究会大会での発表(シンポジウム)は、学習指導要領の改訂を控え、音楽科の目指すべき方向性について論じたものである。どちらにおいても、音楽を学習することの意味と音楽的イメージを育成することの重要性について、これまで十分に議論されてこなかった音環境・音楽環境との関係から説明することができたと考えている。
|