研究概要 |
(1)統計学への代数学と組合せ論の応用. (a)一致率検定への有限群論の応用.欠損値を持つ正方分割表の対角和(一致数)に関する高次モメント公式のエレガントな証明を得た.比較言語学におけるオズワルトのシフト法への応用がある.副産物として,一致率検定のための正確確率法のアルゴリズムと超幾何多項式の積公式が得られた. (b)フィッシャーの並べ替え検定と分割表の列挙問題との関係の解明. 対称群上の一様分布の商測度として,周辺分布を固定した分割表の多項超幾何分布が得られることを示した.つまり対称群上のランダムウォークから分割表のランダムウォークが誘導される.重要なことは収束の速さの見積もりが対称群の指標理論を使って可能なことである.観測データの互換による入れ換えと,分割表にマルコフ基底を加えてゆくことが対応するが,その収束はかなり遅い.その改良の見込みがついた. (2)代数学と組合せ論の統計学向けの理論整備. まだ手を付けていない.統計関係の研究集会で有限群論の応用についてやさしい解説をした. (3)高次元分割表. 2次元の場合に比べて格段に難しい.対称群のヤング部分群による書き換えが出来た.ただ高次元分割表における成分の特別な形の一次結合について平均と分散の公式を得た. (4)比較言語学などへの応用. 一致数に関するいくつかのモメント公式は比較言語学に使われる.具体的な応用として,アジアのいくつかの言語と日本語の関係を,基礎語彙表の語頭子音の一致数を使って調べた. 分担者井上は統計,平峰は組合せ論を担当した.代表者は統計関係のふたつの研究集会で発表した.代表者の論文は投稿中(北大)である.次年度代数関係の集会でふたつの講演予定がある.
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