研究概要 |
次数2のジーゲル保型形式のうち、ウェイトが1,2、3のものにっいて研究した。 (1)ウェイト1についてはジーゲン大学のN.P.Skoruppaと理論的な研究を行った。複素上半平面と複素平面のいくつかの直積上の関数としてヤコービ形式を定義することができる。ヤコービ群が十分大きければ、ウェイト1のヤコービ形式の次元はヤコービ形式のインデックスと素なレベルには依存しない等のことが証明できる。これはウェイト1/2の保型形式に関するSerre-Starkの結果や、ヴェイユ表現の分解の理論などをもちいる。これをジーゲル保型形式のフーリエ・ヤコービ展開に応用し、さらに悪い素点でのヘッケ作用素などを応用するなどの算術的な論法を用いることにより、パラホリック部分群などについて、ベクトル値をこめてウェイトのジーゲル保型形式は存在しないことを証明した。離散群を小さく取るとウェイト1のゼロでないカスプ形式は構成できるので、上記の結果は離散群に依存した、かなり微妙な結果である。IV型領域への応用も、ある程度、得られている。 (2)ウェイト3については、ウェイト1が次元の計算上のコホモロジーの障害になっていることがわかり、研究当初の発想では思いもよらないことであったが、(1)の結果の応用として、任意のパラホリック部分群について具体的な次元公式が得られた。結果はウェイト4以上の式に1加えればよいという形であり、以前からいろいろな人が予想していた通りである。これは特筆すべき進歩である。 (3)ウェイト2については、研究代表者の指導の下、大阪大学大学院生内田理恵が実験的な数値計算を援用して、存在しうる最低次数のウェイトである20次対称テンソル表現では、全モジュラー群については、保型形式は存在しないことを証明した。これは全モジュラー群についてウェイト2のものはベクトル値でも存在しないと言う筆者の予想の傍証になっている。
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