この研究の目的は、楕円曲線、アーベル多様体の有理点(有理数解)を求めるという古典的な問題について、p進的手法を用いた新しい方法を開発することにある。有理数体上の楕円曲線に対し、有理点を理論的、組織的に求める一般的な方法はHeegner点の理論とその類似くらいしか知られていなかったが、私は最近のRobert Pollack氏との共同研究で、超特異還元を持つときの岩澤理論、特にp進L関数を使って、有理点を構成する方法を研究した。この方法の中心にあるp進高さ関数を詳しく研究した。同変玉川数予想や新しいLichtellbaum予想と結びつけて考えることにより、よりよい理解が得られた。p進L関数の微分の値と楕円曲線に付随するexponential写像を使って有理点を作るというわれわれの方法を、有理点の階数が1より大きい場合に一般化しようということについては、うまく行かなかった。 また、さまざまな楕円曲線にこの方法を適用して、たくさんの数値例を得た。overconvergent modular symbolの計算にどのくらいの時間がかかるかもわかった(3の100乗くらいの精度は簡単に計算できる)。楕円曲線のSelmer群についての、Greenbergの予想についても、楕円曲線が超特異還元をもつときに、さまざまな実例について、確かめることができた。これも2つのp進L関数が存在することの利点である。
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