当該研究において、今年度はローレンツ多様体の特別な場合である、ローレンツ・ミンコフスキー空間内における、余次元2の空間的部分多様体に対して、そのローレンツ微分幾何学的性質及び、特異点論的観点からの研究を実施した。通常、ユークリッド空間内での微分幾何学的では、余次元1のいわゆる超曲面が標準的な役割を担う、それは、余次元が1なので、法線方向がただ一つきまり、いわゆるガウス写像が単位超球面上への写像として定まり、その微分により、ガウス・クロネッカー曲率が定まることが主な原因である。ここで、ミンコフスキー空間を物理学における特殊相対性理論が記述される時空であると理解すると、時間軸を加えた、ユークリッド空間より一次元高い空間であると認識するのが自然である。そのように考えると、余次元が2の空間的部分多様体がユークリッド空間の場合の超曲面に対応していると考えることができる。当該研究では、余次元2の空間的部分多様体に対して、光円錐内の球面への光的ガウス写像を標準的に定めることにより、そのような部分多様体の微分幾何学が構成されることを示した。このようにして獲られた、不変量(光的ガウス・クロネッカー曲率)は残念ながら、ローレンツ不変量ではないが、その不変量における平坦性はローレンツ不変であることが分かる。さらに、その曲率に対しては、全曲率を計算すると、ガウス・ボンネ型の定理が成り立つことが分かった。また、この光的ガウスクロネッカー曲率は、余次元2の空間的部分多様体と光的超平面との接触の席合いを計る量であることがルジャンドル特異点論の応用として解った。このことは、光的タイトはめ込みの理論が構成できることを示唆しており、部分多様体論の新たな可能性を広げるものであると言うことが出来る。
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