平成19年度の研究として、ローレンツ空間形内の光的超曲面の特異点と余次元2の空間的部分多様体のローレンツ微分幾何学的性質との関連について研究した。ローレンツ空間形はその曲率により、ミンコフスキー空間(曲率零)、ドシッター空間(曲率正)、アンチドシッター空間(曲率負)がある。このうち、ミンコフスキー空間内の光的超曲面とその特異点および余次元2の空間的部分多様体の光的ガウス写像、光的ガウス・クロネッカー曲率の研究は以前の研究でなされたので、主にドシッター空間およびアンチドシッター空間内の部分多様体の研究を遂行した。その結果、アンチドシッター空間内の余次元2の空間的部分多様体に対して、ミンコフスキー空間の場合と同様な、光的ガウス写像を定義しようとしたが、その像が存在する空間が、ミンコフスキー空間やドシッター空間の場合と異なり、3次元トーラスとなることがわかり、光的トーラスガウス写像と名付けた。その結果新たな不変量が発見された。この不変量は双曲的柱超曲面を平坦な超曲面とするもので、実際、その平坦性は曲面が双曲的柱超曲面との接触が退化した点に対応することが解かった。一方、3次元トーラスのから、球面への自然な円束が定まり、その射影をとおして、光的球面ガウス写像を発見した。この光的球面ガウス写像と光的トーラスガウス写像の関係は光的球面ガウス写像がラグランジュ写像で光的トーラスガウス写像はその被覆となるルジャンドル写像であることがわかった。その結果、それぞれのガウス写像を用いて定められる曲率は異なったものであるが、その平坦性は同一であることがわかった。
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