研究概要 |
研究代表者・納谷信は、研究分担者・研究協力者と共同で、井関と納谷が論文Combinatorial harmonic maps and discrete-group actions on Hadamard spaces, Geometriae Dedicata 114(2005),147-188において導入した不変量δを、ある程度一般的なCAT(0)空間に対して上から評価するという問題について研究を行った。当面の目標は、「任意のCAT(0)空間に対してδが1-ε以下である」という条件をみたす正数εが存在するか否かを明らかにすることである。 納谷信と分担者・小林俊公、豊田哲(名古屋大学多元数理科学研究科・博士後期課程3年)は、δを直接評価する方向で研究を進めた。まず、台が3点の確率測度μに対して、δ(μ)の良い評価を求めることから始め、数値計算も行いながら評価の改善を進めたが、最終的に豊田哲が理論的考察によりδ(μ)が常にゼロであることを証明した。その後、台の点数がより多い場合にも数値計算を進めているが、同時にどのような有限距離空間がCAT(0)空間上の点配置として実現できるかという問題を考える必要があり、この点は今後の課題として残されている。 納谷信は、分担者・井関裕靖、近藤剛史(京都大学数理解析研究所・COE研究員)とともに、CAT(0)空間の列に対してそれらのδが1に収束して行く状況について考察した。そのような状況は起こりえないことを証明することが念頭にあったが、今のところ実行できていない。極限空間に定まる測度の台が1点になってしまう可能性を排除できるか否かを明らかにすることが当面の課題である。
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