研究課題
Donaldsonは、定スカラー曲率ケーラー計量を偏極類の中にもつ非特異代数多様体が(正の次元の線形群の作用をもたないならば)漸近的安定であるという著しい結果を得ました。これがorbifoldに対しても成り立つかどうかは、Zhangの結果から、orbifold上にbalanced計量に相当するもの(これを仮想balanced計量とよぶ)をうまく設定できるかどうかにかかっています。ところで一般型代数曲線の標準モデルとしてorbifoldがとれるということに注意しますと、仮想balanced計量の数学的基礎付けに成功するならば、例えばGiesekerによる一般型代数曲線の標準モデルとして得られるorbifoldの漸近安定性定理がDonaldsonの方法で示されることになります。そこで、この試みの第一歩として、Catlin-Lu-Tian-Zelditchの漸近的ベルグマン核の漸近展開のorbifold versionに関する色々な結果の情報収集を行いました。また菅平での複素幾何に関する国際シンポジウムを開き、仮想balanced計量の基礎付けについての種々の取組を通して、Donaldsonの場合にうまく機能した「陰関数の定理」に類似するプロセスが、orbifold上のKahler-Einstein計量の場合にも成り立つかどうかを検証中です。ただし、orbifold計量は、特異点のまわりでbalanced計量(より一般的にはFubini-Study計量)と乖離してしまうので、この問題を克服すべく乖離の様子を詳しく解析するとともに、色々な関連するデータを収集したというのが今年度行ったことです。
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ICM 2006, European Mathematical Society vol.2
ページ: 813-826