研究課題
生体組織は弾性体と見なすよりも粘弾性体と見なすほうが自然である.菅は、Voigt型粘弾性体である寒天を用いて、MRE法による実験を行い、計測データを採集した。この計測結果をもとに所求のずれ弾性率と粘性率導出するのが、本研究の主たる目的である。中村、山本、久保は計測データから所求の区分的に一様なずれ弾性率と粘性率導出する一つの方法として、数値微分法の適用を考え、それに必要な公式を導いた。この公式の有効性を見るために、藤原はまず誤差が非常に小さい計測結果を数値計算により生成すると共に菅が行った実験結果を忠実に再現した。そして、藤原は前述の公式と差分法による数値微分法を使って、数値的に生成された計測結果より弾性率と粘性率を、高精度に求めた。また、中村とその共同研究著である主が考案した誤差に対してロバストな正則化手法による数値微分法を用いて、王は菅の計測結果より所求のずれ種性率と粘性率を求める数値実験を行った。いくつか注目すべき知見を得たが、満足の行く結果は得られなかった。さらに簡便な数値微分法の適用を継続して推進するには、もっと菅の実験を改良し、計測結果の精度を上げる必要がある。ところで所求のずれ弾性率と粘性率導出は、必ずしも区分的に一様とは限らない。そこで中村とその学生達は、所求のずれ弾性率と粘性率導出が滑らかな場合に、ずれ弾性率と粘性率を求める方法を考案した。この方法は数学的には厳密であるが、今のところ入力データが実際に生成できるかが不明であるため、実験と数値実験を行うに至っていない。また、ずれ弾性率と粘性率が区分的に滑らかというもっとも一般的な状況への対応も視野に入れると、ダイナミカルな計測結果に対する最小二乗法として誤差にロバストな代田の共役勾配法が有効であるとの知見に到達した。現在は、この方法による数値実験の遂行の準備を行っている所である。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (2件)
Journal of Computational and Applied Mathematics (to appear)
第56回理論応用力学講演会講演論文集
ページ: 327-328