研究課題
真正粘菌変形体は原始的な神経系さえ持たない、単純な体制を持った多核単細胞生物であるが、迷路を解いたり最短経路問題を解く能力があることが、中垣らによって示されている。彼らが迷路を解く際には最終的なルートに管を残すという形を取るが、単純に迷路を解くというだけでなく、餌の量の多さによって多重にルートを残したり、単独の管を残したりと、状況に応じた反応をしている。我々はこのことを実験的に明らかにし、それを再現する数理モデルを提出した。また、真正粘菌変形体は多くの餌を提示された場合には、それらをできるだけ総長が短い経路でつなぐが、これは数理的にいえばスタイナー問題を近似的に解いていることに他ならない。NP完全問題であるスタイナー問題は、最短経路探索問題よりも遙かに困難な問題であり、まともに解けば計算時間の指数的発散という問題に直面するわけであるが、ここでも真正粘菌変形体は「知性」を発揮している。我々はPhysarum Solverを以下のように拡張することにより、スタイナー問題を近似的に解く方法を開発した。まず与えられた点を含む凸包を細かいネットワークで覆い、短い時間間隔ごとに2頂点のペアをランダムに選び(実際はまず一方を選び、他方はそれからなるべく遠い頂点を選ぶ)、それにPhysarum Solverを適用するのである。このようにすると、スタイナー最小木ではないが、それと位相的に等価な経路を求めることができる。これを元にスタイナー点の位置を緩和することにより、スタイナー最小木に到達できるのである。少なくとも正解がわかる程度に頂点数が少ない場合についてはほぼ確実に正解に到達することがシミュレーションによって確かめられた。
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