研究課題
本研究では、有効な数値数式の融合(組合せ)をシステマチックに行える戦略・理論を構築することを最終的な目標とし、そのための第1歩として、『多項式の根、もしくは、連立代数方程式の解の近似を利用した計算の効率化』という枠の下で、2種類の近似値、「数値的な近似値」と「記号・代数的な近似値」の組合せの戦略の構築を試みています。初年度となる平成18年度では、最も基本である1変数多項式の根の近似に重点をおいたものとして、多項式のガロア群計算、分解体計算を重点的に取り上げました。分解体計算では、根の近似を利用することで、分解イデアルのグレブナー基底が線形方程式を解くことで効率よく得られることをパリ第6大学のRenault博士との共同で国際会議ANTS VIIで発表しました。この研究のさらなる発展として、根の数値的近似値と記号・代数的近似値との計算可能な対応関係を共同で調べ、Renault博士が数式処理システムMagma上で大規模な計算機実験を行いましたが、誤差評価の問題もあって、まだ発展途上の段階にあります。また、ガロア群計算に密接なものとしてパラメータを持つ多項式の分解がありますが、そこで活用される近似計算法を検討するために、より一般的な枠組みとしてパラメータを持つ多項式により生成されるイデアルの分解計算を考え、計算が既存の計算法の組合せで実現できることが分かり、国際会議ICMSで発表しました。この研究は計算可能性を示しただけのもので、その効率面(計算機上での実現)が今後の課題となっていますが、ここに数値・数式融合がうまく適用できる可能もあり、現在検討中です。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
Algorithmic Number Theory, Proceedings of ANTS-VII, Lecture Notes in Computer Science 4076
ページ: 124-140
Mathematical Software, Proceedings of ICMS 2006, Lecture Notes in Computer Science 4151
ページ: 391-402