主な研究目的は、定曲率空間における不変な等温面の性質について調べることである。海外共同研究者のMagnanini教授(フィレンツェ大学)および研究分担者の宇田川准教授(日本大学)と電子メールによる普段の研究連絡の他に、7月の上旬の4日間、Magnanini教授が愛媛大学へ立ち寄り、研究打合せを行い、宇田川准教授が7月に主催した京都大学数理解析研究所での幾何学の研究集会において、代表者が「拡散と不変な等位面I、II」と題する連続講演を行い、宇田川准教授ならびにその他の幾何学の研究者たちと討論及び情報交換を行った。また、楕円型および放物型方程式の解の等位面の形状の研究に詳しいFerone教授(ナポリ大学)を愛媛大学へ招聘し、討論および情報交換を行った。 今年度この研究によって得られた新たな知見を述べよう。ユークリッド空間内の非有界な境界をもつ領域Ωを考える。境界の温度を1に保ち、初期温度を0とするΩ上の熱方程式の初期境界値問題の解uに対して、この領域内の超曲面Γが任意の時刻でuの等温面になっているとき、Γを不変な等温面という。このとき、2次元の非有界な回転面を境界にもつ3次元領域Ωが不変な等温面ΓをもつならばΩの境界は円柱面に限る。(この結果は論文準備中であり、2007年12月の龍谷大学での国際研究集会で発表した。)証明は境界に接する球内の熱量の初期時刻での挙動の第2項の係数の性質を知ることによる。以前は第1項の係数の性質のみにより、例えば、Ωの境界が有界なときはΩの境界は一つの球面か2つの同心球面に限られることがわかっていた。
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