研究概要 |
研究目的にかかげた目標に関する次の幾つかの興味ある成果が得られた. (i)未知関数の時間に関する微分のべき乗の非線形項と未知関数自身のべき乗の非線形項を含む二重非線形放物型方程式に対する指数アトラクターを構成した. この種の二重非線形放物型方程式に対して、従来の研究では,弱解の存在は知られていたものの、解の一意性が保証されるような高い正則性を有する解の存在は知られていなかった.このため、指数アトラクターのみならず大域アトラクターに対しても、その存在を議論するための基本的情報が全く欠如していた.このような状況下で、一気に指数アトラクターの構成にまでたどり着いた意義は極めて大きいといえる. アトラクターの存在を示す過程で、この種の二重非線形放物型方程式が、放物型方程式の際立った性質のひとつである、正則化現象(smoothing efect)(初期殖の正則性が悪くても、解の正則性が瞬時に改善する現象)を有していることも示されている点で,新たな知見を与えている. (ii)我々の従来の研究によって,p-Laplacianを主要項に持つ準線形放物型方程式に対する初期値境界値問題に対して,全ての解軌道を引き付ける「大域アトラクター」が、L2で構成され、さらにそれが無限次元となるための非線形項f(u)に対する十分条件(f(u)=u u:十分小)が与えられていたが,これはかなり特殊な状況であった. より一般的な非線形項f(x、u)に対しても、同様な結果が成立することを示唆する、いくつかの具体例が発見された.
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