研究概要 |
本研究計画では,金属鉄の表面エネルギーへの雰囲気ガスによる影響により,形成される珪酸塩-金属鉄組織に違いが生まれるという仮説を立て,金属鉄表面エネルギーおよび金属鉄-珪酸塩(フォルステライト)間の界面エネルギーの雰囲気ガス(S,O,Nなど)依存性の決定をおこない,金属鉄が単独で核形成する環境,または先に凝縮したフォルステライトを核として低過飽和度でも金属鉄が成長する環境を決定する温度・圧力・ガス組成の条件を決定することを目的とする.今年度も,昨年度に引き続き酸化アルミニウム(コランダム)基盤上での金属鉄の凝縮可能性を調べる実験をおこなった.太陽系元素組成を持つ原始惑星系円盤での金属鉄の平衡凝縮温度に近い1265Kでの凝縮実験の結果,過飽和比が10以下でもコランダム基盤上に容易に金属鉄が不均一核形成を起こして成長することがわかった.これは惑星間ダスト・GEMSのような金属鉄微粒子を含む珪酸塩の形成が容易であることを示唆する.また,金属基盤上への珪酸塩凝縮の実験も開始し,低圧条件下での珪酸塩の金属基盤への凝縮は反応速度論的制約から困難であることが明らかになった.多成分のガス種が基盤上で核形成をするためには,吸着ガス分子が基盤上で出あうことが必要であるが,珪酸塩凝縮温度では吸着ガスの平均表面滞在時間が短く,吸着ガス分子の衝突確率が極めて低かったためと考えられる.次年度の酸素雰囲気中での凝縮実験に向けた装置の改造もおこなった. これらの実験結果は2008年3月にヒューストンでおこなわれたLunar and Planetary Science Conferenceや2007年8月にツーソンでおこなわれたMeteoritical Society Meetingなどで発表した.
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