本研究では、およそ20年先の将来計画を見据えた軟ガンマ線天体観測用の結像光学系の、基礎開発を行うものである。特に、軟ガンマ線観測に特化したPt/C多層膜スーパーミラーを製作し、X線反射・散乱法によって多層膜の光学特性を調べ、低エネルギー領域での特性との比較を綿密に行う。これによって100keV領域における多層膜構造の物理特性の解明ヘアプローチする。軟X線領域における光学特性の理解がそのまま外挿できるかどうか、実験的に検証することができると期待される。 平成18・19年度においては、30〜200keVの広帯域において多層膜の角度反射率評価を実施し、将来の天体観測光学系構築のために十分な反射性能を持つこと、定量的に、軟ガンマ線領域における光学定数が既存の理論値と大きく異なっていないことを明らかにした。また高エネルギー限界を決定する最小周期長が、技術的には10A程度、実用的には20A程度であることを明らかにした。 こうした結果に基いて平成20年度においては、(1)より多様なパラメーター設計、(2)面精度による結果の不定性を除去するための高精度成膜基板の導入、(3)光学定数測定のためのエネルギー掃引実験技術の開発、の3点について展開した。これによって、硬X線観測衛星塔載用設計の多層膜反射鏡の硬X線・軟ガンマ線特性の系統的な評価のための技術が開発され、評価が実施された。この他本研究では、放射光とイメージング検出器を組み合わせて、X線光学素子反射特性の包括的な評価手法が確立され、今後の研究展開に有用な技術が得られた。 以上を以て本研究の最終成果とする。
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