液体シンチレータ中の^<14>C測定:カムランドの実験データを使いエネルギースペクトルを解析した結果、カムランド液体シンチレーター中の^<14>Cの量が^<14>C/^<12>C比で10^<-18>のレベルであることがわかった。また発光剤に含まれる^<14>Cについて東大原子力研究総合センターの加速器質量分析計(AMS)を使って調べたところ、^<14>C/^<12>C比が10^<-16>であったが、液体シンチレータ中の発光剤は重量比で500分の1なので、^<14>Cの大部分は液体成分からくることが判明した。^<14>Cは環境中に10^<-12>レベルの^<14>C/^<12>C比で広く存在し、AMSによる^<14>C/^<12>Cの感度は測定過程での環境からの汚染で決まると考えられている。液体成分の^<14>C/^<12>Cの測定には少なくとも10^<-18>の超高感度が必要なため、測定環境の清浄度の大幅な改善が今後の課題であることがわかった。 蒸留試験:^<14>Cの除去においても周囲からの^<14>Cの侵入をいかに防ぐかが鍵である。現有の蒸留試験装置ではこれを満たす気密性を得るのは困難なため、カムランド実験室で建設中の蒸留純化装置を使い、純化前後の発光剤中の^<14>Cを調べることを計画した。しかしながら建設終了後の装置の調整と定常運転に多くの時間がかかり、合わせて蒸留後のサンプル取り出しに必要な環境整備ができなかった。 その他の考察:現在行われているウラン濃縮法は巨大な装置と電力が必要であり、そのまま^<14>C分離に適用するのは現実的でない。同位体元素での原子核の質量の違いによる軌道電子のエネルギー準位_の違いを利用できれば、電磁波を用いてイオン化分離できる可能性がある。炭素では準位の違いは10^<-5>程度と考えられる。しかし実際は^<14>Cは多原子分子中に埋もれているため、多数の構成電子によるエネルギー準位は単原子に比べはるかに複雑であり、この見極めが今後の課題と考えられる。
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