今年度は光電面で電子に変換された光をガス増幅を用いて検出するという原理を検証した。 まず、最近製造されるようになった、10cm角のLiquid Polymer Crystalを絶縁物質に使用した厚さ100μmのGEM(Gas Electron Multiplier)の性能評価を行い、アルゴン、エタン混合ガスを用い、単独で2000倍の電子増幅を確認した。次にこれを二枚重ねて使用し、安定して20000倍の増幅率を実現した。GEMを固定する際のフレームも工夫し接着剤等、ガスの劣化を招く材料を一切廃し、長期動作安定性を目指す、ガス容器を設計した。 つぎに、位置感度のあるガス増幅装置としてμPIC(micro PIxel Chamber)を読み出しに使用し、GEM2枚重ねと組み合わせた。μPICでもガス増幅させることにより、最終的に10^5程度の電子増幅を達成し、大強度の重粒子放射線でも放電せず、安定に動作させることに成功した。 また、フッ化マグネシウムの窓に光電物質としてヨウ化セシウムを蒸着した光電面をガス容器にとりつけ、光検出器を組み立てた。この際ヨウ化セシウムは潮解性があるため窒素封入したグローブボックス内で行い、光電面を劣化させることなくアセンブルする手法を確立した。 そして、実際に興味のある真空紫外光を発する光源として誘電プラズマ放電を用いたキセノンエキシマランプを使用し、製作した検出器に光を照射したところ、誘電プラズマ放電の周波数に一致した光を捉えることに成功し、光検出器としての動作を確認した。さらに検出器を分解、再組み立てを行い、再度光を照射して最初と同じ大きさのシグナルを捉えられたため、当初開発目標に掲げた、繰り返し使用可能な検出器としての性能も確認できた。
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