本研究はワイヤーチェンバー技術、光ファイバー技術、そして透明電極技術を合わせることで実現される新しい手法の荷電粒子検出方法を開発することを目的としている。これは素粒子実験において、大強度の中性ビームが通過する領域において高性能で動作する検出器を開発する必要性から考察されたアイデアであり、「光検出型ワイヤーチェンバー」の実現可能性を検証するものである。 平成18年度はワイヤーチェンバーでの発光の系統的な研究を中心に研究を進めた。試験器として直径5センチの円筒型ワイヤーチェンバーを製作して測定をおこなった。試験器は電気信号の読み出しと共に電子増幅(電子なだれ)中で発生する光の量や波長を測定するための光電子増倍管による読み出しを兼ね備えている。また、使用するチェンバーガスを制御するコントローラが装備されている。今年度は入手が容易で扱いやすいアルゴンおよび窒素ガスをベースに基本測定をおこなった。 ・印加高電圧ごとの増幅率と発光量の関係を測定した。期待通り、増幅率に比例する発光量が得られていることが確認できた。 ・発光している光の成分を確認するために光学フィルターを用いて波長領域を確認した。このことは光検出器や波長変換ファイバーからの要請にとって重要である。 ・混合ガスの成分比を変化させた場合の増幅率、発光量を測定した。アルゴンガスをベースにし、窒素混合量を変化させたいくつかの混合ガスについて測定を行い、窒素の役割についての系統的な考察をおこなった。 本年度は基礎データ収集のための手順の構築に主眼をおいており、次年度における系統的な測定のための環境を整備することができたと言える。
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