研究概要 |
本年度では、以下の研究成果を得た。 (1) フラックス法及びイメージ炉による強誘電体単結晶の育成と試料作製 昨年度に引き続き、フラックス法による強誘電体単結晶Bi_4Ti_3O_<12>および,Bi_<4-x>La_xTi_3O_<12>混晶を育成した。誘電率測定,示差熱分析および偏光顕微鏡観察により、Bi_<4-x>La_xTi_3O_<12>混晶の温度濃度相図を明らかにした。Bi_4Ti_3O_<12>の分極反転可過程のその場観察により、90°ドメインを有する系の分極反転機構についてランダウ・ギンツブルグ理論に基づき考察した。 (2) H字型フラクタルアンテナの作製とテラヘルツ波発振特性の評価 自己相似構造であるH字型フラクタルによりテラヘルツ電磁波が局在することに着目し、高抵抗GaAs基板上にH字フラクタル構造を持つアンテナを金蒸着法に作製した。その発振特性をテラヘルツ時間領域分光により測定し、共鳴効果による増強の程度を見積った。共鳴効果により、発振を大きく制御できることを実証した。 (3) 電子バンド理論による負の透磁率を持つ可能性をある物質の物性パラメーターの探索 メタマテリアルのバンド構造解明のためには、磁化と電気分極を同時に再現する理論が必要である。それを実現する第一原理計算理論の開発には、われわれの「拡張された制限つき探索理論」が不可欠である。本年度は、昨年度整備を行った磁化を扱うための理論(電流・スピン密度汎関数理論)にさらに電気分極を取り込む試みを行った。電気分極は波動関数のベリー位相と密接に関連しており、「拡張された制限つき探索理論」で扱うことが可能であることがわかった。煩雑な定式化は完了し、数値計算可能であることを確認した。
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