研究概要 |
今年度は,世界で初めての強相関有機誘電体の電荷秩序の直接観測をおこなうために,これまで共鳴散乱の使用例がない,広島大学放射光施設HiSORにおいて,様々なビームラインの整備をおこないはじめた。まず,1時間をかけて,有機誘電体の電荷秩序の直接観察に必要な条件およびそのための実施手順等を検討した。またその実施過程で生じると考えられる様々な問題点を具体的に検討した。その結果として,改良すべき課題として,回折計全体のローノイズ化があげられた。このためには,各部分での,遮蔽を工夫する事,真空パス設置などが有効であるとの結論になり,具体的な作業に入りつつある。 これまでは波長固定の測定が多かったが,共鳴散乱では波長を変化させながらの測定となり,波長の変更頻度は遥かに増加する。このため波長変更時のビーム調整の効率化が必要である事が明らかになった。これまでの多軸回折計部分の制御チャンネル数が少なかったことが自由度を制限しでいたので,16chのパルスモータコントローラを導入し,様々なコントロールがおこなえるように改善した。 また,最終的な目標である,Sの吸収端での共鳴散乱へとつなげるために,SのXAFS測定を具体的に検討し,いくつかの興味深い試料の準備を進めている。 また,SPring-8においても低次元有機誘電体の電荷秩序の直接観察を目指し,単結晶は粉末結晶を準備して,精密構造解析による電荷分布の決定をおこなう準備を始めている。そのための,クライオスタットの整備などを急ピッチでおこなっている所である。
|