金属的電子構造をもつカーボンナノチューブのテラヘルツ領域での機能性開拓のため、高配向単層カーボンナノチューブ薄膜を作製し、テラヘルツから可視領域に渡り、波長にして4桁程度にわたる広領域偏光吸収スペクトルを測定した。その結果、半導体ナノチューブのバンドギャップ0.6eV以下に非常に強くナノチューブの配向軸に偏光した低エネルギーの吸収があることが明らかになった。この低エネルギーの励起は、金属的カーボンナノチューブに帰着される。 この偏光した吸収は、非常に興味深いことに、10meV程度に吸収のピークを形成し、低エネルギーに向かい吸収が減少することが明らかになった。したがって、いわゆるテラヘルツ領域(10meV以下)の応答は、この吸収の低エネルギー側のすそを検知しているものと考えられる。金属的カーボンナノチューブは、ゼロエネルギーまで吸収が増加してゆくドルーデ型のスペクトルを示すことが予想されるが、今回明らかになったピーク型の吸収形状とは矛盾するため、実験を理解できるモデルの構築が、テラヘルツ応答を理解・応用するためには必須であることが明らかになった。本年度は、この起源として、ナノチューブ長が有限であることによるプラズモン吸収とするモデルを提出した。 また、ナノチューブがほとんどまっすぐになっている配向膜と、グニャグニャと曲がっている無配硬膜では、中赤外外領域(100meVオーダー)の吸収形状が異なっていることも明らかになった。これは、ナノチューブの湾曲に由来した半導体ナノチューブのギャップ内吸収ではないかと考えられる。
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