本年度は、前年度に引き続きマイクロコイルESR装置の開発を行った。回路素子の最適化、測定方法の改良により感度向上に成功した。具体的には、1.5GHzの周波数で、スピン感度にして10^<13>スピン/G程度の感度を実現した。これは、過去に報告されているLバンド帯(〜1GHz)のESR装置と同様の感度にあたる。この周波数帯は水の誘電損失が少ないことから、将来的に生体応用を考える上で重要な周波数領域にあたる。今後、更なる高感度化を行う上で磁場変調法による測定を取り入れていく予定である。現在、2次元走査機構と組み合わせるための装置を試作している。引き続き、2次元走査によるイメージング測定に向けた装置開発を行っていく予定である。 また、超小型パルス磁石をマイクロコイルと組み合わせたポータブルESR装置の製作をおこなった。これまでのESR装置は電磁石の部分が大きいために、重量が大きく設置場所に制限があった。LバンドESR吸収に必要な1000ガウス程度の磁場であれば、磁場発生部分を1kg程度にまとめることができるために小型化が可能になる。本研究で作製したコンデンサバンクは大きさが約10cm角程度、充電エネルギーがE=0.1Jとなっている。このバンクを用いて、直径3mm、長さ1cmのコイルに2000G程度の磁場を100Hzの繰り返し周期で発生できる。DPPHを標準試料として用い、オシロスコープで繰り返し積算を行うことで定常磁場と同等の感度を得ることに成功した。その結果、室温においてもESR信号の検出にも成功した。このようなパルス磁石を用いた小型ESR装置はこれまでにない新しいものであり、その成果について国際ワークショップで口頭発表を行った。
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