不安定周期軌道を安定化する方法として、時間遅れフィードバックを用いた制御法があり、機械系、電気回路系、レーザー系のカオス状態の安定化や生体系のリズムの制御といった様々な応用が提案されている。本研究では、時間遅れフィードバックの方法を磁性体に用いて、磁性的秩序や異なる磁性状態間の遷移を制御するための研究を行っている。基本的な仕組みは、まず周期外力によって目標となる不安定な周期状態を生成し、時間遅れフィードバックを用いて、その不安定な周期状態を安定化するというものである。このような方法は、新奇な計測手段の開発や、将来の技術開発にも役立つものと考えられる。本研究の目的は、このような制御法の安定性条件や、熱揺らぎがある場合の制御のロバストネスをできるだけ単純化してモデルを用いて調べることである。平成18年度は、微粒子磁性体を想定したモデルを考えて、フィードバックを用いて、Ising的状態とXY的な対称性もつ状態の間の遷移を制御できることを示した。また、1次元ランダウ-ギンツブルグモデルを用いて空間自由度がある場合の制御条件および、安定性が破れた場合の様々な状態の動力学について調べた。前者の研究は、Progress of Theoretical Physics Vol.116 No.6(2006)pp.1005-1028に掲載された。後者の研究は、同雑誌のVol.117 6月号(2007)に掲載予定である。
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