本研究は、古くFaradayの発見した単極誘導(MI)効果およびその実験的方法が、金属や超伝導体の固体物性を探るための新しい手法となる可能性に着眼して計画・実施された。さらにまた、電気力学における回転運動の相対性を考察するための具体的な実験として、教育的な題材に活用することも考慮に含めた。本年度は、常伝導MI効果の実験、超伝導MI効果の観測装置系の整備、および、今後研究対象に含める予定の酸化物系超伝導体試料の合成を実施した。 常伝導金属を用いた実験では、円筒形状の回転子とヘルムホルツコイルを用いた装置系をつくり、回転運動の相対性や電流還路の影響を考慮に含めた分析・考察を行った。回転子の角速度と誘起電圧の符号の整合性を含めた普遍関係が確認され、また、空間の磁場および磁束が慣性系に固着されていることが、正確に確かめられた。 超伝導MI効果観測の準備にあたっては、液体Heデュワー中に希薄のHeガス雰囲気の真空セルを置き、その中にNb製の円盤回転子試料を収めた方式の装置系を試作した。しかし、現在までの測定においては、MI誘導電流は検出感度の限界以下であった。電流検出回路系の感度および回転子の回転数などを見直して、さらに実験を進める必要が認識された。 また、超伝導波動関数に関するグレイン間秩序の観点からも興味がもたれるY系およびPr系のセラミック超伝導体の合成および電気抵抗と磁化の測定実験を進めた。特に、それぞれは超伝導体にならないとされているPr124とPr123の混合焼結体が部分的に超伝導を示している可能性が認められるなどの、予想外の方向への発展が期待される関連成果も得られた。
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