平成18年度は非イオン界面活性剤の親水鎖と疎水鎖の長さをパラメーターとしての相図作成し、準結晶相ないしはσ相の探索を行うと共に、ミセルの動的構造因子の測定から親水鎖の広がりと結晶構造の関係を明らかにする研究を推進した。 最も準結晶構造に近いA15結晶を形成する非イオン性界面活性剤(CiEjと表記され、iは疎水性を担うメチレン鎖の炭素数、jは親水性を担うエチレンオキサイド基の数を表す)C12E8を用い、ミセル相から六方最密格子、体心立方格子、A15格子のミセル間相互作用と、形成される構造との相関を明らかにした。実験を中性子小角散乱(SANS)とX線小角散乱(SAXS)を用い、得られた散乱関数をモデル散乱関数でフィットし、構造因子を求める。実験から得られた構造因子を再現するミセル間相互作用をモデルから計算し、その結果ミセル間には弱い湯川型の斥力ポテンシャルが存在する事を示した。さらに、中性子スピンエコー法(東京大学物性研究所・全国共同利用実験設備)により各秩序相に対する動的構造因子を測定し、ミセルのコロナ鎖がお互いに重なり合う事による、中間散乱関数の変化を実験的に捉える事に成功した。この結果を基に、現在シミュレーションにより実験データを再現するモデルの構築を行っており、このモデルをKamienらの理論計算と比較する事により、準結晶探索の方針を決定する。
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