研究概要 |
20年度は, 本研究課題の最終段階として, 2008年10月に再び阿蘇中岳火口でラマンライダーとスペクトルカメラによる噴煙水蒸気観測を行った. 今回は, 前回までの阿蘇での観測と登別大湯沼での観測をふまえ, 火口湖から蒸発する水蒸気と, 噴気口からまとまって放出されている水蒸気とを区別できるように工夫した. 具体的には, ライダーのビームを水平方向にスキャンして, 水平面内での水蒸気分布を求めた, 別途暗視カメラで上昇速度を測定し, 水蒸気フラックスを算出することができた. これにより, 湖面からの蒸発と噴気水蒸気とを区別することができ, 本課題の当初の目標のひとつであった湖面蒸発率の正確な推定を達成することができた. スペクトルカメラについては, 新規の試みであったこともあり, 測定手法の模索に終始したが, 本研究課題によって一定の見通しが得られた. 800nm近辺の赤外吸収帯を用いることにより, 大気水蒸気による吸収の影響を抑えながら, 火山起源の水蒸気による赤外吸収を捉え得ることを実証できた, ただし, 背景光(太陽光)と火山噴煙との位置関係や気象条件による制約が大きいことが問題点として残っている. また, 野外での即時データ処理方法や機器の操作性などの面で, さらに改良すべき点もある. 2008年9月には, 代表者と連携研究者が集まり, 3年間の到達点と今後のステップに向けた改良点について議論した. その結果, 来年度以降もライダーおよびスペクトルカメラを用いた火山ガス研究を発展的に継続することを確認し, さらなる研究目標に必要な装置のスペックに関する青写真を作った.
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