木星探査機ガリレオに搭載された近赤外線マッピング分光計は、氷衛星エウロバの表面に、硫酸の存在する可能性を示した。ナトリウム・マグネシウム硫酸塩が地下から溶け込んだ水の噴出によりエウロバの地表に到達して、その後激しい放射場によって変化して硫酸を生成させたという地下海洋説が提唱された。ハワイ大学のMcCordらは、硫酸塩水和物もしくは炭酸塩水和物の反射スペクトルが近赤外スペクトルを説明しうることを示した。現在では、地表における塩類水和物や硫酸の存在は地下海洋の証拠と考えられている。 本研究では、塩類(および水和物)の反射スペクトルが測定できるように、分光測定装置を新たに導入する。別予算で、反射スペクトル測定のために、近紫外・可視から近赤外域の領域の二方向反射率を入射・反射方向可変で取得できる装置を導入した。特注でステージ設置部を拡大して、さらに入射角・反射角を3次元的に変化できる装置を新規開発して国立天文台水沢地区に設置した。本研究では、塩類の反射スペクトルを幅広い温度領域で測定して氷天体での存在を議論できるように、近赤外の反射スペクトル測定のための波長拡大ユニットを導入した。これにより、2600nmまでの二方向反射スペクトルを、連続スキャン、ステップスキャンの両方の波長掃引方法で測定することが可能になった。Epsomiteなど氷天体の内部海から噴出して表面に蓄積した可能性のある塩類の反射スペクトルを確認した。
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