研究課題
国内外のGPS観測データを収集し、電離圏における全電子数(Total Electron Content;TEC)を算出し、そのデータベースを作成することにより、以下の結果を得た。1.2000年1月から2007年10月までに日本で起きたマグニチュード6.0以上の地震(20例)について、地震発生後のTEC変動を調べた。このうち、2004年9月5日の紀伊半島沖地震、2007年1月13日の千島列島東方沖地震、2007年3月25日の能登半島地震、2007年7月16日の新潟県中越沖地震の4例において、地震発生から十数分後に震央の位置から遠ざかる方向に伝搬するTEC変動が観測された。さらに、そのうちの3例において、赤道向きに伝搬するTEC変動の振幅が他の方向に伝搬する場合よりも大きいことが明らかになった。この結果は、地震によるTEC変動は、地震に伴って発生した音波が原因であり、音波による中性大気の振動によって電離圏プラズマは磁力線平行方向にのみ動かされるため、このような震央に対する非等方的なTEC変動が起こる、と考えられる。本研究の結果は、地表付近の大気波動が超高層大気に与える影響は小さくないことを表しており、大気の上下結合を解明する重要性を示している。2.米国に設置されている1400台以上のGPS受信機を用いて、米国上空における電離圏全電子数の2次元マップを作成した。これまでに、中規模伝搬性電離圏擾乱や電離圏トラフの広域水平二次元構造が明らかになり、新たな観測結果が得られている。さらに、従来知られていない電離圏現象(例えば、線状に1,000km以上細長く伸びた領域でTECが増大・減少し、数10分で消滅する現象)も観測されており、電離圏の2次元観測の有効性が示された。
すべて 2007
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Geophysical Research Letters 34
ページ: L22101,doi:10.1029/2007GL031663