研究概要 |
本研究では,赤道,低緯度,中緯度,北極の4地点から掘削採取された海底コアに含まれるアーキア(古細菌)起源脂質の分析を行い過去600万年間の古水温の緯度勾配の変化を復元し,緯度方向熱輸送効率の変化と全球的寒冷化の関係を検討している. 本年度は北海道大学に設置された液体クロマトグラフ質量分析計の調整とTEX86指標のルーチン分析を可能にした.中緯度のカリフォルニア沖ODPサイト1014コアの過去15万年間の100試料の分析を行い,TEX86とアルケノンから求められた水温を比較し,TEX86指標が古水温指標として有効であることを確認した.また,オランダ海洋研究所(NIOZ)に出張し,共通試料を分析し,実験室間比較を行い,分析誤差の範囲内で一致する結果を得た.これにより,北海道大学におけるTEX86指標ルーチン分析は確立したと判断した.熱帯域コアと北極点コアの予察的分析も終了した.熱帯域コアについては氷期と間氷期の水温差が5℃と,従来の推定よりも大きな値が得られた.他のコアも分析し,その傾向が正しいかどうか検討する必要がでてきた.北極点コアでは10℃を超える水温値が求められたが,TEX86水温指標を北極点に適用できるかどうかについて慎重な検討が必要である.
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