研究課題/領域番号 |
18654095
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
久保 友明 九州大学, 理学研究院, 准教授 (40312540)
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研究分担者 |
加藤 工 九州大学, 理学研究院, 教授 (90214379)
上原 誠一郎 九州大学, 理学研究院, 助教 (70158773)
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キーワード | 氷天体 / レオロジー / 結晶粒成長 / 火星氷床 / ドライアイス / 氷の高圧相転移 / ダイアモンドアンビルセル |
研究概要 |
氷天体物質の流動物性を明らかにし、物質科学的見地から氷天体のテクトニクスや内部ダイナミクスを論じていくことを目的とし予備的な室内実験を行っている。平成19年度は主に以下のような実験的研究を行った。 1)氷-硫酸塩ハイドレート2相系の結晶粒成長カイネティクス 大型冷凍庫内において氷-硫酸塩ハイドレート系の2相多結晶体を合成し、-5℃の恒温室において粒成長実験を行った。少量の硫酸塩成分が氷の粒成長を大きく抑制する効果があることが実験的に明らかになりつつある。この系はエウロバ外殻氷層の主要成分の1つであると考えられており、その粒成長カイネティクスはエウロバ外殻氷層のレオロジーを議論する上で極めて重要である。 2)氷高圧相の相転移および結晶粒成長にともなう粒径変化の放射光X線その場観察 ダイアモンドアンビルセルと放射光の単色X線回折法を用いて、相転移や結晶粒成長にともなう氷高庄相の結晶粒径変化のカイネティクスを低温高圧下で定量的にその場観察する実験を行っている。デバイリングの回折斑点から結晶数密度を推定する方法を用いて、0-3GPa、200-300Kの条件で、氷のVI-VIII高圧相転移の核生成と成長のカイネティクスや氷VI相およびVII相の結晶粒成長カイネティクスをX線その場観察した。 3)CO_2ice+H_2Oice 2相多結晶体の力学的性質と火星南極氷床の安定性 火星南極氷床はCO_2ice、H_2Oice、dustなどから構成されているが、詳しい構成比は不明で、またCO_2iceのみでは軟らかすぎるため氷床を維持できないことが指摘されている。そこでCO_2ice+H_2Oice 2相多結晶体の流動則を明らかにする実験を開始した。MITのDurham博士らとも協力し、170-200K、0-120MPa付近の条件でCO_2ice+H_2Oice 2相多結晶体の圧密実験、塑性変形実験を行っている。H_2Oice量が多くなるほど圧密されにくくなり、また流動応力も増加することが実験的に明らかになった。今後更に実験を重ねることにより、氷床を安定に存在させうるCO_2iceとH_2Oiceの成分比に制約を与えることができる。
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