本年度は、ダイヤモンド中の包有物周辺の応力分布を顕微ラマン分光法により3次元的にマッピングするための装置開発を行った。研究室に既存の顕微ラマン分光装置に、自動XYステージとフォーカス調整用のZ軸の制御機構を装着し、10ミクロンオーダーの包有物周辺のダイヤモンド結晶に蓄積している応力を3次元的にマッピング測定することが可能となった。実際に包有物周辺の応力をラマンスペクトルのシフトから検出するためには、0.1cm^<-1>かそれ以下の測定精度でラマンスペクトルの波数を決定する必要がある。我々のこれまでの研究によって、得られたラマンスペクトルに数値処理を行うこと0.1cm^<-1>の分解能でピーク位置を決定することができることが明らかになっているが、分解能が向上する反面、実験室における微小な温度変化が測定結果に無視できないノイズをもたらすことが明らかになった。この問題を解決するために、我々の分光システムに波長の内部標準としてネオンランプを取り入れ、実験室の0.5℃程度の微小な温度変化に応じて分光器が収縮することによって生じるデータ変動を完全に補正することに成功した。ここで開発した装置を用いて、ダイヤモンドに含まれる包有物周辺を対象に、3次元的なラマンマッピング測定を行った。その結果、包有物周辺の応力分布が3次元的に画像化され、ダイヤモンドの深さ起源に関する情報が得られつつある。来年度はX線CT画像データとの対比などを行う予定である。
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