研究概要 |
1.コロイド溶液プラズマ中イオン照射実験に供するだけの高密度の単独・孤立垂直配向単層カーボンナノチューブを形成する最適なプラズマパラメータを策定する目的で,高周波補償回路を導入したラングミュアプローブを製作し,正確な高周波プラズマ中のプラズマ密度,空間電位,浮遊電位,電子温度の測定を実現した. 2.高周波放電拡散プラズマCVD法により成長させた単層カーボンナノチューブの結晶性,及び成長量と,1.の手法で正確に測定したプラズマ条件を比較することにより,単層カーボンナノチューブ成長におけるプラズマ中荷電粒子の効果を検討した.その結果,10eV程度の特定低エネルギー,及び50eV以上の高エネルギーイオンが基板に入射する条件下では,単層カーボンナノチューブに多数の欠陥が生じることが明らかとなった. 3.成長,及び成長抑制の両効果を導入した,プラズマCVD中単層カーボンナノチューブ成長機構の数式表現を実現した.本数式により,電子顕微鏡写真のみで議論されることが多かったこれまでの単層カーボンナノチューブ成長機構に関して,成長速度,エッチング係数,触媒寿命等一般的かつより詳細なパラメータによる検討が可能となり,単独・孤立垂直配向単層カーボンナノチューブの高密度成長法確立に重要な役割を果たすと考えられる. 4.コロイド内包カーボンナノチューブの創製を目的として,溶液中アーク放電マイクロプラズマを用いてコロイドの形成実験を行った.本年度は,シリコンコロイドを形成するための基礎資料を得る目的で,アーク放電電極材料として実績のある鉄を用いて,鉄コロイドの形成を試みた.溶液中アーク放電によって形成した鉄微粒子(コロイド)を透過型電子顕微鏡により観察し,粒径分布を調べたところ,8nmを中心として3nm〜10数nmの分布を持つことが明らかになった. 5.アーク放電電流の変化や溶液の種類,界面活性剤を利用すること等で,粒径サイズ制御が期待できるため,溶液中アーク放電マイクロプラズマはコロイド内包カーボンナノチューブ創製への有効な手法であると考えられる.
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