本研究の目的は、タンパク質に圧力をかけることで引き起こされる構造変化や機能変調を1分子計測できる、高圧力1分子イメージング技術を開発することにある。圧力は体積と共役な量であり、タンパク質の立体構造の安定性を制御する因子として考えられており、数千気圧程度の加圧により、タンパク質間相互作用を変調できることが知られている。昨年度までの取り組みにより、研究代表者らは200MPaまでの耐圧性能をもつ光学顕微観測用の小型高圧セルの開発に成功した。この高圧セルの開口数は0.5程度であり、主として落射蛍光像の顕微観測用に開発されたものであった。それに対して、本年度は、200MPaの耐圧性能を維持しながらも、より汎用性が高く、かつ、微弱な蛍光像を高感度観測できる光学顕微鏡の開発に取り組んだ。前者については、位相差像の観測ができるように、2つの観測窓の開口角を広げることにし、後者については、開口数をよりひろげることにした。そのため、1)高い硬度をもつ石英、もしくは、サファイアを窓材として採用し、2)光学観測窓の大きさを小さくし(〜1mm)、3)窓剤の厚みを薄く(〜1mm)することにした。以上のような設計原理に基づき、高圧セルと窓剤の設計を行いながら、高圧セルを製作した。その結果、200MPaの耐圧性能をもちながら、開口数0.7となる高圧セルの開発に成功した。但し、窓剤としてサファイアを用いていたため、通常の対物レンズでは結像能の低下がみられ、画像にぼけが生じた。来年度は、さらに改良を加えることで、開口数をより大きくし、かつ、顕微画像の改善に取り組む。
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