本研究の目的は、タンパク質に圧力をかけることで引き起こされる構造変化や機能変調の1分子計測を可能にする顕微観測システムを開発することにある。これまでの研究により、タンパク質間の分子間力は、数千気圧程度の圧力により変調をきたすことが知られている。平成19年度は、タンパク質間相互作用の変調を可能とする2000気圧程度の耐圧性能を保持しながら、高解像度の顕微観測を可能とする高圧セルの開発に取り組んだ。汎用性の高い実験系とするために、市販の光学顕微鏡を用いて実験できることが条件となる。そこで、高圧セルの本体には、1)高強度材料であるハステロイ鋼を利用した単純な構造とし、2)部品数を減らしコンパクトな構造であり(70×70×23mm)、O-ringで簡便に圧力シールができるよう仕様にした。また、恒温槽を用いた循環水で簡便に温度を変化させられるようにした。高解像度の顕微観測を行うためには、開口数の高い油浸対物レンズを利用することが必要不可欠であり、高圧セルの観測窓の薄型化(〜0.2mm)に迫られる。そこで、研究代表者らは観測窓を小さくすることで(〜0.2mm)、耐圧性能と高開口数の両立をはかることにした。観測窓周辺のデザインや加工精度により、耐圧性能にばらつきは生じるものの、おおむね2000気圧程度の耐圧性能を達成させることに成功した。しかしながら、現状のデザインでは、高度な試料調整を伴う生体分子の1分子イメージングを実行することは困難であり、今後観測窓表面を適切に処理できるように改良を加え実用化に向けて検討を重ねる予定である。
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