研究概要 |
1.高濃度溶液でイオンが生成することを確認 レーザーパルスを集光照射することでイオン化が起きることを確認することを第一の目的とした。この目的に適した分子は1,3,5-トリメトキシベンゼンである.このイオンは630nm付近に蛍光を出す.従って,まず,レーザーでイオンを生成,そのイオンを励起できる光は同じ励起光(この場合は351nmエキシマーレーザーを用いた。)で励起できると考えた。実際、イオンが生成し、その蛍光スペクトルが観測された。蛍光強度は入射レーザー光強度の1.5乗に比例した。本来2光子でイオン化、更に1光子で蛍光、という3光子過程と予想される。ところで、レーザービームの集光体積がレーザー光の1.5乗になり、n次光子過程が見かけ上1.5次になる場合があることが知られている。従って、ここでは3光子過程が見かけ上レーザー光強度の1.5乗に比例したものとして解釈した。 フェムト秒レーザーを集光することにより、TMPD(テトラメチルパラフェニレンジアミン)がイオン化されことを、照射後そのカチオンの吸収スペクトル現れることにより、確認することができた。 2.タンパク質結晶化のレーザー照射条件 結論として1.5μJ/パルスノ照射エネルギーの場合に結晶化の促進が見られた。100μJ/パルスではたんぱく質の変性が見られた。この場合、結晶生成は抑制された。なお、試料と照射条件は以下の通りである。ニワトリ卵白リゾチーム50mg/mLリザーバー塩化ナトリウム0.48M(一週間で結晶が出ないようなしきい塩濃度)pH4.8酢酸ナトリウム緩衝液0.10Mサンプルを作成して4日後にレーザー照射、波長:800nm、パルス幅:40fs、照射パルス数:100パルス、照射して3日後、6日後、10日後に顕微鏡で観察した。 レーザーが理想的に集光できているとすれば、強度は1015Wcm-2に達する。当報告者らの研究により。これはフェムト秒パルスによる自己収束の強度、有機分子がイオン化する強度の20倍以上に相当する。(これに関し、次ページのリストの論文を報告した。)従って、集光点において、イオンが生成していることは確実である。
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