ビス(ジエトキシホスホリル)アセチレンとそれぞれ硫化水素ナトリウム、或いはセレン化水素ナトリウムとの反応により得られるテトラホスホリルジヒドロチオフェン及びセレノフェン、更にこれらをmCPBA酸化することにより得られるテトラホスホリルチオフェン及びセレノフェンをブロモトリメチルシランによりシリルエステルとし加水分解することにより対応する一連のテトラホスホン酸を合成した。特にこれらの中でチオフェンテトラホスホン酸に着目し、種々の反応を検討した。まず、チオフェン環やホスホン酸を経由した磁気的相互作用を期待し、硫酸銅(II)との反応による銅(II)錯体の合成を検討したところチオフェンテトラホスホン酸と銅(II)が1:3である塩が得られ、磁化率測定から銅(II)間には反強磁性的相互作用が見られた。また、生体の構成要素である骨や歯を模倣した材料の開拓を目的としてチオフェンテトラホスホン酸と塩化カルシウムとの反応によるホスホン酸カルシウム塩の合成を検討し、チオフェンテトラホスホン酸とカルシウムが1:2である塩を単離した。これらホスホン酸塩の合成では溶液の酸性度により種々の組成比の塩の合成が可能であり今後多様な塩の合成や新規材料への展開が期待できる。一方、ホスホン酸分子内無水物の生成を期待してDCCによる脱水を試みたがこれに関しては分子間脱水に由来すると考えられる難溶性白色固体の生成にとどまった。また、テトラキス(ジエトキシホスホリル)チオフェンを硝酸二アンモニウムセリウム(IV)と反応させたところ対応するチオフェンオキシド類ではなくCe(III)にテトラホスホリルチオフェンがbisbidentate ligandとして配位した配位高分子であると考えられる1:1錯体が得られた。
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