ペンタフルオロベンズアルデヒドとピロールとの縮合反応をスカンジウムトリフラートをルイス酸として水中で行い、環拡張コロールである二種類のヘプタフィリン(1.1.1.1.1.1.0)を合成することに成功した。ピロールユニット7つと架橋炭素6つからなるヘプタフィリンは酸性条件では平面性の高い構造をとることを見いだし、そのNMRからこのヘプタフィリンが芳香属性を持つことを明らかにした。さらに、このような大環状共役化合物が非常に大きな二光子吸収特性をもつことをDongho Kim教授(韓国、延世大)との共同研究により明らかにした。興味深いことに、中性条件では二光子吸収特性は5分の1程度にまで低下した。二光子吸収特性に対して平面構造と芳香族性が大きく影響することを示す結果である。さらに、ヘプタフィリンと類似の構造をもつノナフィリン(1.1.0.1.1.0.1.1.0)についても同様に酸性条件で大きな二光子吸収特性を示すことを明らかにした。一方、オクタフィリン金属二核錯体の分裂反応の反応機構に関して、引き続き密度汎関数法を用いた分子軌道計算により検討した。オクタフィリンコバルト二核錯体では炭素-炭素結合の切断において同様のラジカル中間体の存在が示唆されたものの、活性化エネルギーが上昇するという計算結果を得た。この計算結果は実験事実とよく一致しており、計算の妥当性を支持するものであると考えられる。
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