研究概要 |
カーボンナノチューブは、その特徴的なπ共役構造に由来する特異な性質により注目を集めている。近年、カーボンナノチューブの導電性、半導体特性、水素貯蔵能などのマクロな性質が明らかになってきているものの、分子レベルにおける性質は未だ計算科学の手法を用いた研究が主力であり、実験的なデータは少ない。そこで、有機合成的に「構造が明らかで溶媒に可溶なカーボンナノチューブ」を自在に合成する手法が開発できれば、本分野の研究にブレークスルーをもたらすと期待される。本研究では、ボウル状π共役系分子スマネンやカリックスレゾルシンアレン等を土台分子を用い環状オリゴフェニレンを構造規制することにより、筒状分子を構築するのに適切なコンフォメーションに固定し、酸化的脱水素反応でナノチューブ骨格を合成する。 本年度は、標的として12個のベンゼン環が縮環して環状になったシクロ[12,0]フェナセンを選択した。剛直な3次元構造を有するカリックスレゾルシンアレンについて分子力場計算および動力学計算により種々モデリングを検討した結果、標的とするカーボンナノチューブの土台分子としてカリックスレゾルシンアレンに4対のピラジンイミド部位を導入した筒状分子が適切であることが示唆された。まず、モデリング結果で示された土台分子の合成を行った。ジブロモフェニルピラジンイミドユニットを2,3-ジクロロキノキサリンから3段階で合成した。続いて、エーテル化反応にて4対のピラジンイミド部位をカリックスレゾルシンアレンに導入し土台分子の合成を達成した。
|