研究概要 |
本研究では,超音波振動子を用いて,溶媒とそこに加えられた"分子量の大きな蛋白質試料"を激しく揺動させることを目指している.この状態の下でNMR信号を観測することにより,巨大蛋白質のプロトンNMR共鳴線の分解能を,格段に向上させることを目的とする.今年度の研究計画では,(a)^1H核用ラジオ波チャンネルをNMR信号検出器内に作成する,(b)超音波振動子の最適化を行う予定であった.(a)に関しては予定通り,プロトンのNMR信号(我々の装置では300MHz)が観測できるように,NMRプローブの改造を行った.新しい共振回路を採用した結果,目的の"300MHzで回路の同調を取る"ことは実現できた.^1Hの90°パルスは,90Wの入力に対して15usとなり,新しい共振回路は,溶液^1H NMR測定には十分な性能を有することが分かった. 続いて(b)の課題に入る前に,アダマンタンを溶媒に加えた標準試料にて,^1H NMR測定を行った.超音波振動の照射には,昨年度の予備研究で使用したTiZrセラミック振動子(PZT振動子)を用いた.結果として^1H信号は観測できたのであるが,予想以上に,信号の感度が悪かった.これは,セラミック振動子を駆動する電流ラインから,高周波ノイズがNMR信号ラインに混入しているためであった.我々は,高周波ノイズをデカップルするためにあらかじめバイパスコンデンサを挿入していたのであるが,この方式では十分なデカップルができないということが分かった.現在高周波ノイズを遮断するために新たな対策を検討しており,それが実現でき次第,次の段階"超音波振動子の最適化"に入る予定である.
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