研究概要 |
今日ほど真贋鑑定の必要に迫られている時代はないであろう。最近では,情報通信はもとより,貨幣,装飾品,食品に至るまで殆どすべての製品,産物に対して高度な偽物が出現し,大きな社会問題となっている。このような問題に対して製品樹脂に認証物質を混入させ,出所を明確にするシステム(プラゲノム)が提案されている。本研究ではこのような材料レベルでの出所認証を分子鋳型により行い,高度な生産管理分析法としての開発を行う。材料レベルにおいて出所情報を付加することの利点は,製品自体が破壊や粉砕されてもその情報が保持される高い信頼性にある。 我々の研究グループは,プラスチック表面に分子の鋳型を高精度に作製する技術の開発を行ってきた。このとき,ポリマーには認証物質が含まれないので情報の暗号性が非常に高いと考えられる。 本年度の検討では,アデノシン三リン酸(ATP)を認証物質と考え,その鋳型をポリピロール膜表面に過酸化により作製した。ATPを認証物質として選択した背景には酵素法により非常に高感度な定量が可能であること等による。鋳型膜をカーボン電極上に作製し,トリプルアンペロメトリにより検討を行った結果,ATPは鋳型に高い親和性を有し,認証物質として機能することが示された。さらにATP以外の物質は鋳型ポリマーには入りにくいことが実証されたので,この方法が認証手段として機能することが確認できた。 今後さらに広範な検討を行い,本法実用化のための基礎的検討を進めたいと考えている。
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