研究概要 |
天然アミノ酸・プロリン等の有機分子触媒は、ユニークな活性を示す低環境負荷型触媒として、大きな注目を浴びている。これまでに国内外の複数の研究グループにより、プロリンまたはその誘導体を用いる不斉触媒反応が報告されているが、一般的には触媒効率が良いとは言えない。(基質に対し0.1-0.5等量程度の有機触媒を利用する場合が多い。)本計画研究目的は、新しい有機分子触媒の開発であり、特に、従来の有機分子触媒にない触媒機能の高活性化・多様化(用いる触媒量の削減、高選択制の発現、反応適用範囲の拡大など)を目指している。本目的を達するために注目した候補化合物は含フッ素アミノ酸(非天然型アミノ酸)である。分子内の適切な位置にフッ素原子を有するアミノ酸を用いると、従来のアミノ酸とは異なり酸性度上昇による触媒効率の向上、有機触媒分子のコンフォメーションの固定化などが見込めるため、含フッ素アミノ酸(非天然アミノ酸)の効率的合成法の開発がまず必要となった。私たちはこれまでにβ-位にフッ素原子を2個有するプロリン誘導体の合成を進めてきた。特に最近、β,β-ジフルオロプロリン残基をペプチドに一挙導入(ジフルオロオレフィン部分を利用した非縮合法)できる新しい合成ブロックを開発した(現在論文投稿中である)。 ジフルオロプロリン誘導体、その他のフッ素系アミノ酸を有機触媒として用いる炭素-炭素結合形成反応について、その一般性について現在調査を進めている。特に、非フッ素系の有機触媒分子との反応性の違いを厳密に論じることを念頭に置いている。
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